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「風流交番日記」

2007年09月29日

Posted by navera at 19:13│Comments(4)新東宝時代の茂
ラピュタ阿佐ヶ谷に「風流交番日記」(1955・新東宝)を観にいってきました。大蔵体制前のおとなしい時代の作品。
あらすじはコチラ(キネマ旬報データベース)

タイトルロールを見ていると、製作藤本真澄、監督松林宗恵、出演小林桂樹と志村喬となにやら東宝映画の趣。

国電新橋駅前の交番を舞台に、そこに勤務する大坪巡査(志村喬)、和久井巡査(小林桂樹)、花園巡査(宇津井健)、谷川巡査(御木本伸介)の周囲に起こる出来事を描いたグランドホテル形式な作品。
4人の巡査が大坪さん→酸いも甘いもかみ分けたベテラン、和久井さん→地方出身のちょっとお人よし、花園さん→モテモテで要領よし、谷川さん→高校を卒業したばかりのちょっと固い新米とそれぞれキャラが立っているのがナイス。彼らのそれぞれに一貫したエピソードが伴っていて、しっかりとした話の骨格となっている。

エピソードは、息子に家出されてしまった大坪さんがさびしい思いをしていて、その思いを新聞を売る孤児の少年に重ねている話、まだピストルを撃ったことのない谷川さんが凶悪犯を追いかけて初めてピストルを撃ち、お手柄を上げる話などなど。どちらかというと、ほのぼの系のネタが多いです。

我らがアマチさんの役は、大坪さんの家出した息子の一郎。まずは大坪さんが飾っている一郎の写真で登場。さわやか青年なショットです。しかし、当時のアマチさんのやっていた役柄からいうと、家出してからぐれて兇悪な男になっているのではないかと予想。
・・・そして登場場面。一郎は無銭飲食で警察の留置所につれてこられ、身体検査をされます。ここで大暴れして抵抗して邪悪な笑みを浮かべて胡散臭い台詞を吐くのではないか、、、といつものワル天知を期待したのですが、そんなことはなくしおらしく警察の調べに応じる一郎。※偽名を名乗りはしますが。
ちなみにこのとき誕生日を問われての回答が「昭和5年3月4日」ご自身の誕生日より1年前だわ(^^;。
次の登場場面では、留置所の中でひざを抱えて自分は弱い人間だと見張りの和久井さんに反省の言葉を述べる。かなり前非を悔いている模様が伝わってきます。一郎の所持していた写真で彼を大坪さんの息子だと知った和久井さんも「親の心、子知らずだ」とさりげなーく一郎に言い聞かせます。
その後留置所から出た一郎は、父の働く姿をこっそり見つめます。和久井さんの言葉のおかげもあるのか、どうやら家出をしたことも反省している模様。
終盤近く、大坪さんのもとに北海道で就職したという一郎からの手紙が届きます。手紙の文面はアマチさんの声で読み上げられます。まじめに働く一郎の映像も映るか!と期待したらそれはなかった・・・。
出番はちょっとですが、ある意味重要な役だし、次第に自分のやったことへの後悔がにじみ出てくる演技がいいです。がんばってるじゃないかヤングアマチ。ちなみに、写真家の土門拳さんがこの映画を観て、アマチさんのお兄さんに「君の弟は有望だ」と言い、それを聞いたアマチさんは感涙に咽んだそうです。

そのほか、エピソードを彩る人物に新聞売りの少年の父に加東大介、和久井さんが片思いする女性に安西郷子、和久井さんに思いを寄せる娘に阿部寿美子、谷川さんに捕まる凶悪犯役に丹波先生、夜の女役に若杉嘉津子や三原葉子ねーさん、さらにチラッと出るアベック役にアマチさんの奥様・森悠子も登場。ワタシ的には隅々まで楽しめるキャスティングです。

それから、ロケの場面が多く、私の地元の新橋の昔の風景が一杯映っているのがうれしかった。昔の新橋駅の建物、全線座などなど。冒頭に銀座方面から新橋駅の汐留口までが俯瞰で映されただけでエキサイトしちゃいました。とすると、一郎が捕まったのは新橋が管轄の愛宕警察署に違いない。
押し売り、水上生活の人々など当時の風俗が出てくるのも興味深い。
使われている音楽もジャズから民謡まで幅広く、いろいろな面で楽しめた映画でした。




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この記事へのコメント
良い意味で期待を裏切られましたよ一郎くんには。あんなしおらしい演技もできるんですねえ…(普段はどんなだと)
全体的にすごくほのぼのしていてリピートしたくなる内容でした。
Posted by mami at 2007年09月30日 00:54
mamiさん、コメントありがとうございます。
兇悪に暴れるのは丹波先生でしたね(笑)。この思いにふける青年って役柄は、「大虐殺」や「地獄」にもつながっていくような気がします。新東宝がエログロに行ってなかったら、案外こういう青年の役もやってたりして。
私ももう一度みたい!と思ったのですが、昨日が最終日だったのですね。残念!
Posted by なべら at 2007年09月30日 11:06
とてもとてもかわいい一郎クンでしたよね~。アップもあってうれしかったです。
実は加東大介さんも好きな俳優さんなので、(ほんの少し)若い頃が見られてオイシかったです。
こんな趣き(それこそ風流って感じでしょうか)のある映画、いいですね。いつかまた見たいと思いました。
Posted by kappe at 2007年10月02日 22:24
kappeさん

コメントありがとうございます。
一郎クン、かわいかったですねえ。地味な暮らしがいやで家出、というのも若気の至りという感じでナイスです。
ユーモアとペーソスが程よく漂ういい映画でした。手錠が外れなくて困っちゃう安西郷子がかわいかったです。ソフト化されるといいですねえ。
Posted by なべら at 2007年10月03日 17:24
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